台東四丁目「山海楼」の生馬麺と半チャーハン

昼時、春日通りから竹町幼稚園の前を通る道に入ってすぐの角に、ランチメニューの看板だけが唐突に現れる。この日は風が強くて、看板を畳んで建物に立てかけてあるだけにしている。それが路地の陰から頭だけ出しているようで心を惹かれる。

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「ボ」がくっついてしまって「ぎ」と読めなくもないのが目を引くが、リストを眺めて「なまうま麺……? 何マー麺……?」と立ち止まってしまったのでDセットの生馬麺と半チャーハンに決めた(後述するがこれをサンマーメンと読むことは後で調べてわかった)。

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店はランチメニューの看板の角を曲がって2棟先にある。とても文字情報の多い外観だ。「横浜名店」「美味しく・楽しく・健康である」「翁さんのお店」……一つ一つ目で追っていくと、説明過剰でそれだけで満足した気になってしまいそうだ(実際初めて入るまでに何度かスルーしている)。

こういう怪しい日本語めいた雰囲気が好きな向きもあるだろう。その時の昼飯の気分に合うかどうかは別にして、自分も好きな方だ。外壁に二列に取り付けられた室外機もそんなムードを高めてくれる。ドレン排水管が一本に束ねられていくさまが美しい。屋上から植木の蔓が垂れてきているのもポイントが高い。

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外観から受ける印象と比べると意外なほど、店内は真面目な?中華料理屋風だ。4つくらい円卓があるし、椅子のカバーも金の刺繍入り。壁の張り紙を見るとWi-Fiが使えるらしい。Wordで作ったのか、A4一枚に「当店使えるWi-Fi」という見出しの下にSSIDとパスワードが書いてある。

前回この店に入ったのは一月の終わりだった。ちょうど春節に入る頃で、ホールのお姉さんが「みんな中国帰っちゃって私一人で大変だよ」と言って慌ただしそうにしていた。その時もDセットにしようと思い、「『ディー』セットで」と伝えたら、「Bですか?」と聞き返されたのだった。周りの席を見ると中高年が多い。だからここは「ディー」ではなく「デー」と発声するのが正解だったのかもしれないな、と考えて、今日はそのお姉さんに「『デー』セットで」と言ってみた。

すると、「Aですか?」と聞き返された。慌てて「あ、すみません、『ディー』です」と言い直すと、お姉さんは照れたように笑って「すみません、Dですね」と伝票を書き直した。

変な日本語でWi-Fiパスワードが貼ってあったり、オーダーが一発で通らなかったり、なんだかブレードランナーっぽいな、と思った。

壁に掛かったTVに映る「ひるおび!」で金正男暗殺事件のニュースを眺めていたら生馬麺はすぐに出てきた。

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醤油スープのラーメンにもやし炒めのあんが乗っている。半チャーハン、サラダ、杏仁豆腐付き。もやしそばからそんなに日が空いてないのにまたあんかけ麺にしてしまった。この手の麺の出来たては熱いことをもやしそばで学んだので慎重に行こう。もやし炒めだけを取って食べる。やっぱり熱い。ここまではいい。もやしに芯が残っているので、もやしが口の端に当たって熱い。これは想定外だった。でもシャキシャキしててうまい。

もやしの他には、ニラ、人参、細切りの豚肉。豚肉は細切りだけど厚みがあっていい。家でやるなら生姜焼き用の豚肉を使えばいいのかなあ。チャーハンは卵が細かくなっているのがプロの技を感じさせる。ミックスベジタブルがお茶目。

食後のコーヒーまでが定食のセットだ。ホットかアイスかを選べる(ホットコーヒーは切れているときもある)。一息ついて周りを見ると、同じ職場ですという風なスーツの男性のグループが多い。大体がタバコを片手に何か喋っている。昼メシ食った後にコーヒー飲んで一服するのは職場の休憩室でもできるだろうけど、何かが決定的に違うんだよな。わかるよ。

店を出てから「生馬麺」とは何なのか調べてみたところ、「サンマーメン」だということがわかった。サンマーメンなら聞いたことがある。でも横浜ローカルのアレだということは知っていても食べたことがなかった。そうか、あれがサンマーメンだったのか。だとすると、看板に書いてあった「横浜名店」というのも全然信じてなかったけど本当なのかもしれない。

本当に横浜に本店があります