標準ズームがすき
はじめに
この記事は、沼 Advent Calendar 2018 - Adventarの19日目の記事だ。もう25日で申し訳無さが強いが、とにかくそういう形でこの記事を書いている。沼といえばカメラ自転車アウトドアと昨今相場が固まっているように思うが、例に漏れず私もカメラの話をする。標準ズームレンズの話だ。
標準ズームレンズとは
写真用の交換レンズにおいて、標準ズームレンズとは広角域から望遠域の入り口ぐらいまでの焦点距離の幅を持つズームレンズのことを主に言う。具体的な製品の仕様としては、135判では28-70mmとか、24-85mmのズームレンジになる。開放f値は3.5-5.6や4-5.6だったりするものが多い。開放f値がズーム全域で2.8等の製品もあるが、そうしたものは"大口径"標準ズームレンズなどと分けて呼ぶ向きもある。この記事では、「標準ズームレンズ」といえば開放f値が暗い方の製品群を指すものとする。 標準ズームレンズは、カメラとセットで販売されるものが多く、カメラとともにユーザーの手に渡る、そのカメラシステムの最初の一本であるとともに、その一本でさまざまな場面を抑えられるレンズという性格付けがなされる。それ故に、「キットズームの次はこの一本!」のように他のレンズのセールストークのダシにされたり、どんな場面でもそれなりに写るけどそれ以上のものは無いとかここぞというときに不便とか、器用貧乏めいたレビューがなされることがある。そういうのを見ると、そういう役回りなんだから仕方ないとはいえ、なんだか寂しいような気持ちもする。 描写性能が優れたレンズが他にあったり、例えば明るさや最短撮影距離が長いことで軽んじられることはあるにせよ、「最初の一本」というのは、それなりに重い役割ではないかと私は思う。もちろん「このレンズを使いたい!」と決意してカメラを買う人も少なくはないだろうが、キットズームに求められるのはそのポジションではないのだ。標準ズームレンズはカメラとセットで「すぐに写真が始められる」という形で販売され、ユーザーにそのカメラシステムへの信頼とか期待とかを抱かせ、他のレンズも使ってみたいと思わせる、そんな役割を担っているというのは、それほど大げさではないだろうと思っている。そのような役割を、コストのかさむ材料や工程を組み込めない中で実現させるというところに、ある種のメーカーの意志のようなものが見いだせないかとも思う。 今回は、"沼 Advent Calender"の記事ということで、キットズームについて掘り下げてみることを仮に「標準ズーム沼」と呼んでみたい。
標準ズーム沼の浸かり方
もしこれを読んでいるあなたがもうカメラをお持ちなら、まずはその機種のキットレンズと、その前後の世代の標準ズームレンズを揃えてみるといいだろう。現行のレンズ交換式デジタルカメラに適合するものなら、1万円前後で中古の標準ズームレンズが買えるだろう。なおここでは135判フルサイズミラーレス等の話はしていない。APS-C用の18-55/3.5-5.6のようなレンズの話をしている。 もしあなたがまだカメラを持っておらず、奇特にもこの記事を読んで標準ズームレンズで写真を撮ってみようと思ったなら、お近くの「カメラのキタムラ」や「ハードオフ」でボディとレンズを探すといいだろう。お店に並んでいるオートフォーカス一眼レフカメラの中から気に入ったものを選び、それに合う標準ズームレンズを選ぼう。デジタルカメラでもフィルムカメラでも構わない。フィルムなら現像のついでにCDにデータ化して書き込んでくれるサービスもあるので、SNSにアップロードするのも安心だ。*1 それで撮影設定をフルオートにして周りのものを適当に撮ってみよう。どんな場面でもそれなりに写る、標準ズームレンズの素性がわかるはずだ。
実例
ここからは、私の手元にある標準ズームレンズたちを、実際に撮影した写真とともに紹介していきたい。なお、個々のレンズに関する記述は、比較撮影やチャート撮影のような評価によるものではなく、感想を述べているだけであるということを予め断っておく。
ミノルタ AF 28-105mm/f3.5-4.5
α507siらへんと組み合わされていたらしいレンズである。このレンズについては、奈良の鹿寄せを見に行ったときの写真が印象深い。
中央の鹿が背景から浮いている感じ! 最初の一本のレンズからこんな画が出てきたら、その後長くミノルタを親だと思って過ごすこと間違いない。上記の記事の中で、鹿との距離が近い写真はこのレンズで撮っているはずなので、よかったらご覧いただきたい。
この旅行にはα-70との組み合わせで持っていったのだが、軽いボディとこのレンズはなかなか無敵に思えてよかった。 このレンズが販売されていた同時期にはAF 24−85mm/f3.5-4.5という僅かに広角側に寄ったレンズが存在し、そちらもまた良く写る標準ズームである。が、次に紹介するAF 24-105mm/f3.5-5.6によって2本ともラインナップ上では置き換えられてしまった。
ミノルタ AF 24-105/3.5-4.5
このレンズは、2000年にミノルタα-7とともにリリースされた。単に近い仕様のレンズをリプレースしただけでなく、性能的にも前モデルを超えていこうとしたのがなんとなく感じられる気がする。 AF28-105で見た後ボケもいい。
以下2枚はどちらも望遠端105mmでの開放。
先代モデルであるAF 24-85/3.5-4.5 とAF 28-105/3.5-4.5 は、フードのバヨネットが共通で互いのフードを使い回すことができた*2。しかしこのレンズはバヨネット形状が異なるため、先代レンズのフードを使い回すことができない。フード無しで購入したためにこの点は完全にアテが外れた格好になってしまったので、どなたかフード単体で売っているのを見かけたらご一報下さると大変うれしい。
smc PENTAX-F 35-70/3.5-4.5
ペンタックスSFXとともに登場した、ペンタックスFレンズの標準ズーム。小さい軽い簡易マクロ付き、という仕様で、散歩ついでに持っていく分にはとても使いやすい。
なおこのFレンズ、現代の目からすれば結構尖った意匠をしているので、集めて並べると楽しい。
smc PENTAX-FA 28-105/3.2-5.6 AL IF
ペンタックスの28-105mmのレンズは何本か存在するが、これはフィルム時代の最後のモデル。軽くて小さく、かつズームレンジも十分広いので、散歩ついでに持っていくにはちょうどよい。ただフードを付けるとそれなりに幅を取ってしまうので、いくぶん気軽さが削がれる。 これはNATURA 1600を入れて、夜に散歩したときに撮影したカットだ。標準ズームには厳しい場面かと思われたが、暗所でもまあまあ粘ってトーンが出ているように思われる。
このレンズは、K-3でフィルムのデジタル化*3をするときにも使っていて、画角の調整が簡単にできるので重宝している*4。
おわりに
印象に残った写真を選んだらなんだか薄暗い写真ばかりになってしまった。今回挙げた4本はどんな場面でもそれなりに押さえられて持ち運びもしやすく、どれも気に入っている。次回(?)までの宿題は、明るめの写真を増やすこととしたい。