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東上野三丁目「シスター」のベーコンと刻み高菜のスパ

下を向いてばかり歩いていたら虹を見逃してしまうよ、と朝ドラの主題歌でミスチルが唄っているが、昼メシを探すのもどこか似ている。路面店ばかり見ていては、地下や空中階にあるいい感じの店に気づけなくなってしまう。まあこれは個人的な経験則で、好みの店がそんなロケーションにあることが多いのと、路面店の様子を見るのも下ばかり見ていたらできない。やっぱりあんまり似ていなかった、ごめん。

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「シスター」は永寿総合病院の斜め向かいのビルの3階にある。上野駅からこの病院の前を通る道は頻繁に通るのだが、この店の存在に気づいたのはごく最近のことだ。1階は病院の近くにはよくある調剤薬局だし、店の入口は脇の路地の方に開いているしで、ただ歩いているだけではまったく気に留めることがなかった。きっかけはよく覚えていないけれど、病院の前でふと目線を上げたら、通りに面した窓に「コーヒー&ダイニング」と書かれているのが目に入ってきたのだった。 f:id:azmin:20170316130952j:plain 立て看板が日焼けしていていい味出している。ホワイトボードに書いてある今週のお弁当(とは言いながら重箱で出されるイートインメニューだ)がいい感じだ。鶏むね肉のごまだれっていわゆる棒々鶏? それにアジフライ、なんだか不思議な組み合わせだけどいいじゃない。これにしよう。「エレベータをご利用ください」との案内に従ってエレベータを呼んでみると、なんとホームエレベータだ。 f:id:azmin:20170316131108j:plain なかなか見ることのない操作盤にアガる。閉めるボタンがない。 f:id:azmin:20170316131117j:plain

3階に着いてドアが開くと、エントランスなどはなくいきなり店内である。窓が南向きなので店内はとても明るい。エレベータは厨房からは死角になっている上、出入りするときにチャイムが鳴ったりとかはなさそうなので、一応店主に一声かけてから席についた。今週のお弁当を頼むつもりでいたが、メニューも目を通しておこう。 f:id:azmin:20170316131310j:plain ベーコンと刻み高菜のスパ。いや、こっちの方が断然気になる。確かに高菜ってラーメンに乗せたりするし(博多のアレは辛子高菜だけど)チャーハンにもするからいけるかもしれないけど、高菜をスパゲティに、か。ちょっと想像つかないしこっちにしよう。

注文して待つこと数分、果たしてベーコンと刻み高菜のスパゲティは目の前にやってきた。

ベーコンと高菜がちゃんと麺に絡むようにして口に運ぶ。これは……確かにベーコンと高菜だ……。ベーコンと炒めてちょっと出てくるラード、高菜、スパゲティ、なんというかそれぞれに飾りがない。醤油はたぶん入ってないし、ニンニクも入っていない。これだけで成立している。温めた高菜の野菜らしい甘みがある。なんだこれ、すごいぞ。うまい。 スパゲティは喫茶店メシでよくあるもっちりしたものではなく、標準茹で時間で上げたばかりという感じの硬さ。店主が「中で固まってるかもしれないんでよく振ってくださいね〜」とパルメザンチーズとタバスコを置いていったが、「これチーズ要るか……? いらなくない……?」と考えているうちに、結局チーズを使わないまま食べ終わってしまった。

せっかくなので、プラス200円のコーヒーもいただいていくことにした。コーヒーは一杯ずつハンドドリップで淹れてくれる。カップの脇に、ミルク、砂糖、そしてコアラのマーチが1つ添えられているのが心憎い。

店内を見渡すと、自分含め近所で働いている風の人と病院帰りのばあちゃんでおよそ半々である。目の前に座ったスーツの男性二人組の片方がiQOSを取り出して吸っているそばで、その隣のテーブルの短く刈り込んだ白髪にピンクのメッシュが鮮やかなばあちゃんが、セブンスターの煙をうまそうに吐き出している。おのおのがその人生に満足しているかは外からは分からないけど、その対比を見ていると、安直だけど人生楽しんだもん勝ちだよな、としみじみ思われた。時刻は14時前。壁にかかったテレビから「上沼恵美子のおしゃべりクッキング」のジングルが聞こえてきてすぐ、店主がチャンネルを日テレに変えた。大学生の頃、学校に行こうか行くまいかぐずぐずして迎えた午後、おれもまったく同じ視聴行動だった。その気持ちはよくわかる。